先日、こちらの本を読みました。「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」中村哲・(聞き手)・澤地久枝
この本を読み進めるなかで、知らないことだらけに愕然としてしました。。。
始めに、知っていることと言えば、中村哲医師という名前。中村医師が亡くなったということ。そしてペシャワール会という会の存在。
そんな私が、中村哲医師が亡くなってこの12月で2年。なぜ、この本を手に取ったかと言うと、別の本を探しに行った書店で、たまたま目に留まったことがキッカケでした。
優しく微笑む中村哲医師の表紙に、「ああそうだ、いつかは中村医師やペシャワール会について知りたいと思っていたんだ。」ということを思い出します。
この本を書店で手に取ったときは、どちらかと言うと気軽な気持ちでした。その後、あまりにも浅はかだった自分に後悔してしまいます。
この本が重いとか軽いとか、そういったことではなく、
日本から遠くアフガニスタンの地で何が起こっているか。アフガニスタンがどういった所で、そこで人々はどのような暮らしをしているか。タリバンとは。。。
私は全然知らなかった。。。
中村医師と澤地久枝さんとの対談
こちらの本は中村医師が亡くなる前の2010年に発行されています。
聞き手は澤地久枝さん。1930年生まれのノンフィクション作家です。
本の「はじめに」の部分には、こんな事が書かれていました。私はこの部分を読んで、この人が書いた本なら読んでみたいとも思ったのです。
ペシャワール会の会員になり、わずかながら寄付もした。それは異国での医療行為の延長として、アフガニスタンに井戸を掘り、今や灌漑用水路の建設に挺身する「医師」の行動に心を動かされ、深い敬意を抱いたからだった。
なにか役にたちたい、そう私は考え、思案の末にいきついたのは、中村先生の本を作り、その本がよく売れるようにつとめ、得られる印税によって先生を若干なりと助けること。
私は自分のために名前を売るとか、大きなおカネを得るとか、そういった目的で努力するのはひどく苦痛で、絶対にやりたくない。やったこともない。
しかし「このこと、この人のため」と思いこんだら、少々の苦労や恥など私にはなんでもなくなる。
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る 」はじめにより
中村医師と澤地さんの対談形式になっているので、読み易くなっています。
そして、細やかな澤地さんの沢山の質問が、アフガニスタンの様子をありありと感じさせてくれます。
夏は何度になりますか。 あちらの地面は固いですか。 現地の生活で、水を運ぶのは男性の仕事ですか、女性の仕事ですか。 どうやって運びますか。 麦の収穫は何月ですか。
お二人のお喋りに、同席させてもらっているような感覚になる場面もあります。
砂漠は乾燥地帯で、動物がいないような印象を受けますが、いろいろいるんですよね。 トカゲは? サソリとかムカデはいません? 鳥は?スズメ?鷹とか、鷲とかいうものはいないんですか?
高校生でも読めるようにこのような書き方にこだわった、と澤地さんもおっしゃっていますが、実際は本を読み慣れていない学生さんには、少ししんどいと感じるかもしれません。けれど、多くの学生さんにも読んで欲しい一冊です。
中村医師について
中村医師とはどういう方だったのでしょうか?
中村医師はご自身のことについて多くは語らなかったそうです。
ファーブルのような暮らしが夢だったという中村医師が、遠いパキスタン、アフガニスタンの人々の命のために、二十五年に及ぶ現地生活をつづけることになった背景。現地に至るまでの遍歴には、静かだが劇的なものがある。
しかし御当人は、苦労は話や愚痴には縁のない、さらりとしたお人柄だ。私自身はこの五年ほど、全国へ出かけ、かつてなく多くの人に会った。そして気がつけば、親しくなった相手は、中村哲医師への関心、支援の意志をもつ人であることに驚かされた。
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る 」より
しかし、こちらの本では伯父さんである作家の火野葦平についてや、御両親など御家族のことについても書かれています。
とは言え、こちらの本だけでは中村哲医師の全てが分かるというわけではありません。そしてアフガニスタンの現状が全て分かるというわけでもありません。
高山と昆虫に見せられた青年医師は、いつか引き返せない人生に踏み入っていた。ヒンズークシュ山塊、そして最高峰ティリチ・ミールの白銀にきらめく山容をはじめて目にしたとき、中村哲医師のつぎの人生の扉は開いたかのように。 両親からひきつがれた心がけ、「人の役に立つ人間」であることのゆるがぬ意志。
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る 」より
アフガニスタンは日本にとって最も分かりにくい国の一つである。様々な意見や解釈が飛び交い、実像をつかみにくい。いわば「情報の密室」である。しかし、今アフガニスタンで進行している出来事は、やがて全世界を巻き込む破局の入口にすぎない。(中略)
「破局」といえば響きが悪いが、それで人間の幸せが奪われる訳ではない。人間もまた自然の一部である。
世界を覆う不安の運動ー戦争であれ何かの流行であれーに惑わされてはならない。
あとがきの添えてより
この本を読み終えた後は、いろいろな映像も拝見させて頂きました。
もし、気になる方(まだ観ていない方)がいらっしゃったら観てみてください。
私がどうこう言うより、こちらの方が伝わるかもしれません。
さいごに、今の社会に感じる不条理さを改めて中村医師の言葉からも感じました。

また、他の本も読んでみようと思います。そして、良書に出会えたことに感謝致します。
こちらも併せて読みました。より中村哲医師の生き方を知ることができました。今だからこそ考えることがあるような気がします。